旭川から30分ほど車を走らせれば、「丘のまち美瑛」だ。
近い。
日本屈指の景勝地がこんなに身近にある。なんて幸せなことだろう。
旭川に住んでいた当時は、風景撮影のため、足繁く美瑛に通っていた。
一眼レフカメラを買い、はじめて美瑛を訪れたときのことを今でも思い出す。
小学生の頃からずっと旭川に住んでいたのに、社会人になり、写真をはじめてからようやく美瑛の大地に足を運ぶこととなった。
「クリスマスツリーの木」や「青い池」など、ネットで何か所か有名スポットを下調べしてから丘を巡る想定で出陣。
北海道に住んでいればなんてことのない、いたって普通の田舎道を走ると、やがて丘陵地帯が目の前に現れた。
美瑛の景勝地との最初の出会いは、「マイルドセブンの丘」だった。
「うわぁ〜!!」
おもわず声が出た。
どこまでも果てしなく敷き詰める緑の絨毯の上に、大きな大きなカラマツ林がご鎮座しておられた。
あまりの迫力に圧倒され、大いなる自然のパワーに気圧されている自分がわかる。
とんでもない先制パンチで、完全に打ちのめされてしまった。
実際に目の当たりにすると、相当大きい。
トラクターと比較すると、そのとてつもないスケール感がよくわかる。
結局この日の予定は一瞬で崩壊し、半分も周れずに終わった。
マイルドセブンの丘に大感動して長時間撮影していたこともあるが、どこもかしこも絶景だらけで、車が進まない。
景勝地から景勝地へと向かう名もなき道中の景色も美しすぎた。
計り知れないポテンシャルを秘めた「美瑛」という地に大きな衝撃を受けた一日。なぜ今で訪れなかったのか、激しく後悔した。
その後、旭川から美瑛に通う時間すら惜しいと思うようになり、美瑛に引っ越した。
美瑛に住み、毎日のように自然風景を撮り続けてわかったことがある。
春夏秋冬、どの季節も想像を絶するほど素晴らしいことだ。
のちに、マイルドセブンの丘で受けた衝撃が、美瑛富良野エリアでは他にたくさんあることを知る。そしてそれらが、一年という時間の中で刻々と移ろい変化していく。
時間や天候、自然現象が加わると、変数はもはや無限である。
撮り尽くすなんてことはありえない。
美瑛中毒という言葉を聞いたことがある。
ある人は全シーズンを制覇したいと、定期的に訪れる。
またある人は、毎月静岡から美瑛に通っているという。
何度も何度も訪れたくなる気持ちがよくわかる。
ぜひ極上の風景を肌で感じてほしい。
2023年2月 tomoki